早稲田大学校友会は2010年度に設立125周年を迎えます。これを記念し、2010年4月22日、大隈講堂にて、「早稲田狂言の夕べ」が開催されました。今回の演目は、重厚な構成の中に庶民の生活感情も描かれた秀作『木六駄』、室町当時の世相や風俗もうかがえる楽しい作品『二人大名』です。
大隈講堂特設能舞台に最初に登場したのは白井克彦早稲田大学総長。続き竹本幹夫早稲田大学演劇博物館長が今回の演目について作品の背景やあらすじ、見所を解説すると、いよいよ狂言の幕開けとなりました。
まずは「二人大名」。校友で重要無形文化財総合指定保持者・善竹十郎氏と、氏のご長男・善竹富太郎氏、ご次男・善竹大二郎氏が共演されました。二人の大名が上京する道行き、通りがかった男を召使のように扱っているうちに、立場が逆転、刀で脅されて鶏の蹴り合う真似や犬の噛み合う真似をさせられる羽目に…。
二人の大名たちの滑稽味あふれる演技と軽妙なやり取りに、会場から沸き起こる笑い声が次第に大きくなっていき、休憩に入るときには、場内の空気がすっかりくつろいだものになっていました。
続いて、校友で重要無形文化財各個指定保持者(人間国宝)で早稲田大学芸術功労者でもある野村万作氏が太郎冠者をつとめる「木六駄」。野村万之介氏、石田幸雄氏に加え、本学在学中の万作氏の外孫・野村遼太氏も共演されました。主人の言いつけで伯父の家までお歳暮を届ける太郎冠者。雪の中の道中、峠の茶屋で酒を所望しますが、あいにくの売り切れ、そこで届けるはずの酒樽に手をつけてしまいます。
降りしきる雪の中追い竹1本で十二頭の牛を追う様、また、美酒が進み次第に酔態となっていく様子…その情景が豊かに表現される円熟味溢れる万作氏の芸に、観客は惹きこまれずにはいられませんでした。
早稲田大学校友会125周年の幕開けを飾るにふさわしい、充実した本格狂言の夕べとなりました。