早稲田大学の学生、校友はさまざまな分野でボランティア活動を行っている。
「大変そう」「ハードルが高そう」そんなイメージもあるボランティアだが、
社会や他者へのちょっとした関心から飛び込める世界かも……？
まずは学生や校友の活動から、多様な「ボランティア」に触れてみよう。
 

獣害駆除の地域貢献も狩猟の楽しみも

平日は都内で勤務し、週末になると、月2、3回のペースで千葉県鴨川市に赴く森裕紀さん。鴨川市の猟隊に参加し、獣害駆除のボランティアを行うためだ。
　20代の森さんは、メンバーの中で最年少。同世代も少ないという狩猟の世界だが、森さんがのめり込んでいったきっかけは、大学時代にさかのぼる。
「幼い頃から格闘技をしていたのですが、在学中に好きな格闘家がイノシシを仕留めているのをＳＮＳで見て、狩猟に興味を持ちました。大学に獣害駆除活動をする『狩り部』という団体があることを知り、所属していた部の引退後に参加することに。大学での活動は1年弱でしたが、そこで狩猟免許を取り、鴨川市とのつながりもできました。卒業してからは個人的に連絡を取って参加しています」

　鴨川市では、シカやイノシシが田んぼなどを荒らす食害が多数あり、相談が猟友会に寄せられるという。猟期（法律で定められた11月から２月の狩猟のできる期間）以外の時期は、許可を持つ人のみ銃を持つことができるため、森さんはサポートなどを行っている。
「私の参加する猟友会は犬を使っていて、5、6人がグループになって犬と人で獲物を追い込む“巻狩”もしています。普段は、獲物と人の位置を伝達する無線の中継係や、仕事を終えた犬の回収、獲物の解体が私の仕事です」
　人をどのように配置するか、自分はどこにいるべきか、山での動きはベテラン猟師に学んでいった。
「庄司武雄さんが私の師匠のような存在で、時に言葉で、時にその姿を見て猟を覚えていきました。3年前、猟期に初めて一緒に山に入った時のこともよく覚えています。目の前をシカが走っていったのですが、動きが早く、私はとっさのことで撃てなかったんです。でも庄司さんがそのシカを撃ったので、すぐに近づいていったら、すごく怒られて……。致命傷を与えていても、暴れて蹴ったり角で刺したりする可能性がありますから。庄司さんが改めて仕留めましたが、その時、猟の危険性と命を奪う重みを感じました」
　一方、徐々に自分で仕留める数も増え、純粋に技術が上がることの楽しさや、地域の人からの感謝にやりがいも感じるそうだ。
「猟友会のジャケットを着て歩いていると『ごくろうさま』と声をかけてもらうこともあり、地域の役に立っているんだなと感じます」
　若手の担い手が少ない現状の中で、地域社会では、獣害対策への継続的な取り組みが一層求められている。
　「純粋に楽しく活動できているので、今後も続けていきたいです。獣害駆除（狩猟）は始めるまでのハードルが高いですが、飛び込めば知らない世界が広がっていて面白いので、ぜひ同世代の人にも挑戦してほしいと思っています」

銃と罠の免許を持ち、年間250ほどの動物を駆除しているという庄司さん。足繁く通ううちに、師匠と弟子のような関係になったそう

犬同士の相性なども考えて2頭の猟犬を連れていく。「犬の成長を見るのもグループ猟ならではの楽しみ」と森さん