- 知る
クラシックを楽しむ
楽器を演奏しなくても、聴いて楽しむことができる音楽。
音楽系学部を持たない早稲田大学だが、
クラシックにまつわる活動に取り組む校友は少なくない。
彼らの姿を通じて、クラシックに触れてみよう。
取材・文=山田治生
ハーピスト 平野花子
楽器と一体になって音を奏でる感覚にのめり込み、
日本では希少なハープ奏者の道へ
現在、大阪フィルハーモニー交響楽団のハープ奏者(ハーピスト)として活動しています。大阪フィルを含め、日本のオーケストラで正団員としてハープ奏者がいるところは数えるほどしかないのでとても貴重です。オーケストラのほかに、全国各地でソロや室内楽での活動もしています。
2007年、大学2年生の頃に受けたアメリカでのコンクール(第7回USA国際ハープコンクール)で銀メダルを頂き、その後、08年3月にデビューリサイタルを開きました。東京フィルハーモニー交響楽団やNHK交響楽団から協奏曲の仕事を頂いたりしたほか、しばらくは、ソリストとしての活動に専念していたところ、16年に大阪フィルのハープ奏者のオーディションがあり、17年に正式に入団しました。もともとオーケストラに興味があり、参加したいと思っていたのです。
オーケストラでハープを弾く曲の中では、マーラーの『交響曲第2番「復活」』のような合唱が入る大曲が、心地がよくて好きです。大きな作品をみんなで演奏するのが、私の性に合っているように思います。オペラなどもハープが独特の使い方をされるのでやりがいを感じます。
演奏者としてのハープの魅力は、楽器を抱きかかえるように弾くことから振動が自分に届き、楽器と一体となって音楽を奏でていると感じられるところです。そこがのめり込んだポイントですね。ハープは、一度弦をはじくと止めない限り音が鳴り続ける楽器なので、いらない音を止めてコントロールする技術が求められます。ハープには音階のペダルが7本ついていて、それで音を変えられるのですが、ペダル操作を間違ってしまうと音がまったく変わってしまいます。そこが難しい点です。また、ほかの楽器では出せない音の出し方ができるのもハープの特徴です。フランスの近代以降にハープが発展し、ハープの曲も多く作られるようになったので、その時代以降は、ハープのソロがあるスメタナの『我が祖国』など、音が残る特性を生かした作品が多いですね。
大学では、教育学部国語国文学科で近代日本文学を専攻していました。教育学部で担任をされていた松木正恵先生がなんと趣味でハープをやっておられて、私のデビューリサイタルにもいらしてくださったのはこの上ない喜びでした。大学に行って良かったのは、たくさんのかけがえのない友人に出会えたことです。学生時代に同じクラスで共に学んだ友人たちとは今でも連絡を取り合っていて、私が関東でコンサートに出演する際には駆けつけてくれ、感想を聞かせてくれる頼もしい応援団でもあります。
少し育児から手が離れてきたので、これからは、リサイタルに時間をかけて取り組みたいと思っています。今までは、ハープ奏者の作曲した技巧的に華やかな作品を取り上げてきました。ベンジャミン・ブリテン、ガブリエル・フォーレ、パウル・ヒンデミットなどの有名な作曲家がハープのために書いた作品も少ないながらあるので、今後はそのような曲だけで構成したリサイタルを開催したいと考えています。
クラシック音楽ビギナーへのおすすめ
ユニークな曲名もクラシックの魅力
気になったものから聴いてみては
想像力をかき立てられるようなタイトルの曲がたくさんあるので、曲名で選んでみるのもいいと思います。オーケストラなら、『魔法使いの弟子』(デュカス)、『動物の謝肉祭』(サン=サーンス)。ハープの曲では、『いたずら小鬼の踊り』(ルニエ)、『塔の中の王妃』(フォーレ)がおすすめですね。
毎号特集テーマを変えて、早稲田の今や社会で活躍する校友の姿を伝える、コミュニケーション誌『早稲田学報』。
校友会員の方は定価1,000円×6(隔月刊)=6,000円のところ、校友会費5,000円でご購読いただけます。
校友会員以外の方もご購読いただけます。また、1冊のみのご購入も可能です。