人生100年時代の学び | 早稲田大学 校友会
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人生100年時代の学び

生涯について共に考え、学ぶ。
Life Redesign Collegeで築いた新しいコミュニティー

LRC1期生 小倉 実

おぐら・みのる
1952年東京都生まれ。

 

取材・文=木村咲貴(2011年文構) 撮影=尾崎大輔(2006年社学)

「わくわくする流れに乗ってみる」
人との縁がきっかけでLRCへ

 1977年に大学院理工学研究科を修了後、総合電機メーカーに就職した小倉実さん。日進月歩だった大型コンピューターのシステム開発をしたり、米国企業と提携してコンサルテーションビジネスの立ち上げに参画したりしていた当時を、「とても刺激的な毎日でした」と振り返る。「居心地は良かったので、定年まで勤めると思っていた」ところ、50代で独立し、飲食向けの卸事業を始めた。
「コンサルティング業を極める中で、事業はビジネスモデルが鍵であることを知り、業種の違いはあまり気になりませんでした」

 そんな小倉さんの信条は、「わくわくする流れには乗ってみる」こと。2014年、中小企業家の集まりで出会った校友に、「飲食系事業に携わる人々で『料飲稲門会』を結成しないか」と声を掛けられ、創設に加わった。会員数は飲食業ではない、食べること・飲むことが好きな人も含めて300人を超える。さまざまな活動を展開している現在も、常任理事および事務局長を務めている。

 Life Redesign College(LRC)との出合いも、わくわくする流れの延長にあった。料飲稲門会で早稲田大学日本橋キャンパスを訪れたところ、同席していた社会人教育事業室・守口剛室長から、当時企画段階だったLRCの構想を聞いた。興味を持った小倉さんは、1期生として入学。出会った人との縁を大切に、流れに身を任せた結果だったが、振り返ってみると「正解だった」とほほ笑む。LRCの教養講座として、オープンカレッジの講座を制限なく受講できるが、小倉さんも可能な限り履修した。
いろいろな分野の学問の最先端に触れることができて刺激的でした

生涯現役で社会とつながるために
修了後も続くLRCの輪

 1期生は56人で、3クラスに分かれていたが、「うちのクラスは打ち解けるのが早かった」と話す。女性クラスメートが「お互いをニックネームで呼び合おう」と提案し、さらに週1~2回は開催された飲み会が功を奏したという。
「日本の社会では、相手の年齢やポジションを初めに確かめてしまいがちですが、ニックネームで呼び合うと、フラットな関係でどんどん親しくなりますね。クラスメートとは今も政治哲学系の勉強会を月に1回続けています」

 さらに、クラスを超えた取り組みとして、サークル「生涯現役研究会」を設立。月に1~2回、メンバーが興味のあるテーマについて発表したり、活動したりするもので、会員は2期生、3期生を含めて40人にものぼる。
「生涯現役とは、死ぬまで働くという意味ではなく、常に社会と接点を持ちながら、やりがいのある、わくわくできる活動を探求するという意味です」

 生涯現役研究会のメンバーで始めたのが、自然栽培農業だ。八ヶ岳で無肥料・無農薬の自然栽培農業を営む料飲稲門会の仲間から、60平方メートルの農地を借りて、1カ月に1~2度訪問し、レタス、カブ、カボチャ、ミニトマトなどを育てている。収穫物の一部は困窮家庭の子どもに居場所と食事を提供する施設「子どもの家」に寄贈している。
「シニアにとって楽で楽しい農業の形を追求する『なんちゃって農業』ですが、自分たちのペースで活動し、2年目を迎えました」

 4月から農業を体系的に学ぶため、東京農業大学のグリーンアカデミーにも通い始めた。これも先に通っていたLRC同期からの影響だという。
「グリーンアカデミーの仲間にも、八ヶ岳での農業に参加してくれる人がいて、ご縁がつながっていくのを感じます」

 そして、小倉さんは、この自然栽培の輪を広げていきたいと話す。
自然栽培は昔の農法なので非近代的と思われがちですが、肥料も農薬も使う必要がないため、環境保護の一つの形として、現代ではむしろ必然性のある農法だと考えて取り組んでいます。農業を通して、環境や食料問題にも目が向くようになると思います」

 LRCで最も有意義だったのは「志を同じくする仲間ができたこと」。有名商品をヒットさせたブランディングの専門家、オランウータンへの愛があふれてインドネシアの奥地まで行った女性など、多彩な人たちとの出会いがあった。
学生時代や仕事では決して出会えなかった人たちと巡り合えました。時間や人間関係の制約から解放されたシニアは、見方によっては何でもできる環境を手に入れたということ。LRCに入ったら、仲間を発掘しないともったいないですね」

八ヶ岳での農作業に、この日は4人が参加。農園貸主の八巻珍男さん(右端)の手ほどきを受けながら、ミニトマトの雨よけハウスを設置する。

ミニトマトの苗を植え、虫よけ・保温効果があるわらを敷いていく。自然栽培では、植えた後は収穫までほとんど手をかけない

LRCでの学び
専門外の学問に苦戦も、仲間との議論に充実感

「クラス担任は早稲田大学名誉教授の佐藤正志先生で、古典政治哲学について講義をしていただきました。これまで学んだことのない分野で難しかったのですが、みんなでああでもない、こうでもないと議論をする時間はとても充実していました。最後に、ホッブズの『リヴァイアサン』のTシャツを作成し、先生とクラス全員で記念写真を撮ったのは良い思い出です」


1977年(24歳)
早稲田大学大学院理工学研究科を修了後、総合電機メーカーに就職。システム開発、業務効率化、コンピューターシステム販売に必要なコンサルテーションビジネスの立ち上げなどに従事。

2006年(53歳)
独立し、飲食系の卸事業、カウンセリング系のNPO法人設立などを推進。

2010年(57歳)
事業の傍ら、江戸総鎮守である神田明神とのコラボレーションイベント「夢叶参拝」開始。今日まで開催50回を超える。

2014年(61歳)
「料飲稲門会」設立に参画。常任理事および事務局長を務める。

2017年(65歳)
神田明神との縁により、神田明神監修による、神道をベースにした日本人のアイデンティティーを述べた著書『日本人入門』を上梓。

2020年(67歳)
事業のほとんどは仲間に継承し、ビジネスの第一線からは離れる。

2022年(69歳)
興味を持ったLRCに応募し、見事合格。1期生となる。サークル「生涯現役研究会」を設立。

2023年(70歳)
LRCで出会った仲間と共に、八ヶ岳南麓ファームの一角で自然栽培農業を始める。

2024年(71歳)
先に通い始めたLRCの仲間に触発され、東京農業大学グリーンアカデミーに進学。

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