ワセダを旅する | 早稲田大学 校友会
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ワセダを旅する

ミュージアム編

心が震えたり、新たな発見があったり、私たちを日常とは別の世界へ誘うミュージアム。
案内人となる学芸員として、多くの校友が活躍している。
日本各地・海外のミュージアムをその知られざる仕事の様子と併せて紹介する。
まずは誌上で各館を巡り、機会をつくって実際に訪れてみよう。

※各館により肩書は異なりますが、本特集では「学芸員」とまとめています。
監修=成澤勝嗣(文学学術院教授。1981年文学、85年文研博前)
 

学芸員のお仕事拝見

取材・文=堀川浩之(1988年教育)
撮影=高倉芳浩(ReveLuHope)
写真提供=福井県立恐竜博物館 
 

福井県立恐竜博物館

子どもから大人まで熱中。恐竜には夢があふれています!
主任研究員 関谷 透

せきや・とおる/1981年埼玉県生まれ。2005年教育学部卒業、10年中国吉林大学大学院で博士(理学)を取得。中国四川省自貢恐竜博物館での研究職員を経て、13年4月から現職。主に日本、中国、タイの竜脚形類化石を専門に、化石の記載と系統進化解析を研究。最近は福井県産のワニ類化石にも研究分野を拡大している。

恐竜の標本を見る他、化石発掘体験もできる

 福井県立恐竜博物館は、恐竜化石の一大産地である福井県勝山市に建つ、恐竜を中心とする地質・古生物学の博物館です。
 銀色に光るドーム型の展示室は、「恐竜の世界」「地球の科学」「生命の歴史」の三つの常設展ゾーンで構成。4,500平方メートルという広大なスペースで、ティラノサウルスやカマラサウルスなど、44体もの恐竜骨格(福井県で発見された新種含む)をはじめ千数百の標本を見ることができます。特に、カマラサウルスは私が専門に研究している恐竜でもあり、思い入れの強い展示です。
 他にも、恐竜時代を再現した大型復元ジオラマや映像などもあり、子どもから大人まで楽しんで学べるだけでなく、研究者も満足できる学術的に裏付けされた展示が当館の見どころです。
 2014年には、実際の恐竜化石の発掘現場の近くに、「野外恐竜博物館」を設立しました。展示室横にある化石発掘体験広場と併せて当館の大きな特徴であり、人気の施設です。
 さらに、23年夏にはリニューアルを予定しています。3面コの字型巨大スクリーンで実物大の恐竜たちが躍動する映像、手を動かして実際の研究活動を体験できる「化石研究体験室(仮)」(通年=クリーニング、CT観察、夏期=骨格復元、冬期=化石発掘)、これまで非公開だった収蔵庫の内側をガラス越しに見学できる「見える収蔵庫」などが新登場します。今後のさらなる恐竜ワールドのパワーアップにご期待ください。

恐竜化石発掘の仕事を公開!

1.発掘現場事務所を設営する

基本的に発掘現場は自然の中ですから、休む場所も発掘道具などを収納する場所もありません。そこで、発掘を始める前の準備として、まずは事務所を設営しなければいけません。設営作業は業者に委託しています。プレハブの仮設小屋を細かく分けて運び、クレーン車で組み立ててもらっています。

2.重機で岩石の塊を取り出す

発掘現場によって異なりますが、福井県勝山市の現場は石が非常に硬く、大型の重機を使用して岩石を大きい塊で取り出します。その時に化石が見つかった場合は、随時記録して保存。大型の機械を使用する作業は非常に危険なため、ヘルメットは欠かせません。また、スペースがないため少人数で作業します。

3.岩石についた泥を水で洗い流す

重機で岩石を取り出した後は、岩石の割れた断面を水で洗浄します。その際、断面に化石が露出していないかを注意深く観察することが重要です。発見される化石は、大きな骨の化石から指先ほどの小さな化石までさまざま。発見した化石はその場ですぐに保護し、発見場所の情報を忘れないよう詳細に記録します。

4.ハンマーで岩石を割り、恐竜化石を探す

割れた岩石の表面に化石が露出していない場合は、別の場所に移動します。ハンマー隊が岩石をハンマーで叩いて細かく割り、中に化石が入っていないか確認。化石が発見されたら、ハンマー隊の発見者により、発見場所と発見状況を随時記録していきます。その後、必要に応じて保護剤を塗り、化石を梱包します。

5.化石の周りについた岩石を取り除く

発掘作業終了後は、化石を発掘現場から博物館内のクリーニング室に運び、クリーニング作業を行います。この作業は、化石の周りについた岩石を、専用の機械を使って取り除いていくものです。小さな標本や細部にわたるクリーニング作業を、肉眼で行うのは難しいため、顕微鏡を使いながら取り除いていきます。

6.化石の情報を登録し、研究につなげる

クリーニング後、発見時のリストと照らし合わせながら化石の情報をデータベースに登録。どんな動物の、どの部分の骨なのかを鑑定します。その後は研究領域に入り、論文の記載や恐竜化石標本と比較し、骨格の復元作業に進みます。世界中で多くの恐竜の骨が発見されているため、それらの骨との比較が必要です。

発掘は、未知の化石と出合える夢のある仕事

新たな発見を世に出すことが恐竜研究の一番のやりがい

 日本では、フクイティタン・ニッポネンシスという全長約10メートルの大型恐竜の発見に関わりました。日本で初めて学名がつけられた竜脚類で、「日本産の福井の巨人」を意味します。2007年、中国・吉林大学大学院に在籍していた頃に参加した福井での発掘では、みんなで掘り起こした大きな岩の下に細長い腕の骨を発見し、大きな歓声が上がったことも。発掘現場は過酷なことも多く、初めて参加した中国の現場では、暑さと体に合わない食事で腹を壊し、40度の発熱で入院したこともありました。
 最前線の発掘現場で、まだ誰も見たことのない化石を世界で初めて自分の手で地中から掘り出して、その研究成果を世の人に知ってもらうことは、非常にやりがいのある仕事だと思っています。発掘した化石から標本にするまでの経緯や情報を後輩たちのためにしっかりとデータベースに残しながら、最新の成果を、福井県から世界中へ向けて発信できればと考えています。

諦めずに、いろんな角度からじっくり石を見ることで
何か見つかるかもしれませんよ

「当館の発掘現場では、川の貝や植物の化石がよく出てきます。それは恐竜の生きた前期白亜紀(約1億2,000万年前)の大陸の一部だった当時、川の氾濫で流された土砂がたまった地層だからです。化石発掘体験広場では、小学生が肉食恐竜の歯化石を発見したこともありますが、中には見つからなくて泣き出す子も。コツは石をよく見ること。上だけではなく、下や横からも観察することが発掘の近道です」

現在リニューアル改修工事のため臨時休館中。2023年夏に開館予定。
福井県勝山市村岡町寺尾51-11
(かつやま恐竜の森内)
0779-88-0001

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