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早稲田と本屋
学問の街・早稲田には、新刊書店、古書店を合わせ、都内でも有数の書店街が存在し、学生の精神文化の形成を支えてきた。インターネットの発展により、書籍と書店を巡る環境が大きく変化していく中で、早稲田の書店街の現状と、「本屋」の新たな役割を探った。
「古書ソオダ水」
新規参入が少なかった早稲田に久々に登場したニューカマー。店主の樋口塊さんは37歳。会社勤めをしながらネットで手持ちの本を売ることから始め、2018年1月、グランド坂に店を開いた。
力を入れているのは好きな「詩」。だが意外にも、自分の嗜好や思想ができるだけ透けて見えない棚づくりを心掛けているという。
「来る人を狭めたくないんです。普段は本を読まない人が何かの間違いで入ってきても、『これ、面白そう』という本があるように」
早稲田を選んだのは、当時大塚に住んでいて近かったのと、古書店街も大学もあるから。「早稲田の街や学生から恩恵を受けているので、一度ここに根を張った以上は、店を続けることで街を盛り上げる一助になりたい」と考えている。
「店が1軒あれば、また新しい店ができるだろうし、実際できつつある。そうやって店が増えていくことで、もっと面白い街になっていくといいなと思いますね」
店の存在意義を再認識させてくれた校友の客
うまく社会に適応できず引きこもりがちで、つらくなると店に来て樋口さんと本や映画の話をしていた校友の客がいた。最近、こう言い残して実家に帰ったという。「ここでしゃべるようになって、外に出られるようになりました」──。「そういう場になれていたんだ」と樋口さんはうれしく思い、「たとえ本を買ってくれなくても店が存在する意味があるのかな」と考えたそう。
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