笑い | 早稲田大学 校友会
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笑い

聖徳太子の時代から連綿と続く日本の笑いの歴史。
狂言、落語、講談、歌舞伎から漫才、コントまで人々に笑いをもたらす芸の道で活躍する校友は多い。
また、大学お笑い界のはしりともいえるサークルからは多くの芸人が誕生している。
笑いの作り手を生み出す早稲田の土壌とは何なのか、彼らの姿を通して探ってみよう。

取材・文=佐藤ろまん 写真提供=ヒダキトモコ

落語家 柳亭こみち

 落語との出合いは、大学卒業後、出版社で働いていたときにたまたま見た寄席でした。当時はお芝居が好きで、土日は昼と夜の公演を見て、平日も仕事の後に行けるときは芝居鑑賞という日々。そんなある日、芝居の当日券が取れず、友だちからすすめられたのが寄席でした。
 おじいさんがボソボソ喋ると、目の前にその噺の情景、見たこともない江戸の景色が広がるんです。多くの人が関わって作り上げる芝居と違い、噺家一人が座布団の上で演じる落語……。とんでもない芸だなと思いました。雷に打たれたように心をわしづかみにされ、それからは寄席通い。ただ笑わせられるだけではなく、心に温かい何かが残るんです。
 「落語家になる」と決め、順風満帆だった会社員を辞めて、7代目柳亭燕路に入門しました。落語協会に200人以上の真打ちがいる中、寄席に出続けている人はほんの一握り。古典落語一筋で寄席に出続けている噺家の中の噺家、それが燕路です。
 私は落語家になる上で、「なれないかもしれない」などのマイナスの思考は全て捨てました。夢をかなえるためには、マイナスな思考回路を捨てて、「なるんだ」と夢を見続ける力が絶対に必要。これは鉄則です。
 当時は女性の落語家がものすごく少なく、燕路の下へ弟子入り志願に行ったときも「僕は、落語は男性がやるものだと考える最たる人間だ。女性はちょっと……」という感じでした。私も、入門前なのでかなり生意気なことを言って熱意をぶつけ、文章とともに筆圧からも熱意が伝わるような熱い手紙を何通も書いて、ようやく入門を許してもらえました。
 いざ入門すると1日の休みもなく、4、5年間、体力の限界を超えたまま走り続けました。どんなに体調が悪くても、修業のため早い日は朝6時、遅い日でも8時には師匠の家へ行きました。ほかの人から「女だからって甘くしている」と見られてしまうと、私のためにならないので、かなり厳しく育ててくれたのだと思います。
 落語は、ずっと男性が担ってきた芸能で、全て男性が演じやすいように噺ができているので、女性が演じるのは非常に難しいのです。女性が男性を演じることに対するお客さまの目は厳しい。男性がゼロからプラスを積み重ねるのに対して、女性はまずマイナスをゼロにする必要があって、そこからその人にしかできない演出を加えて、面白い噺にしていくことになります。今、女性の落語家はたくさんいますが、みんなそれぞれの苦労があると思います。

 真打ちになって丸3年、今は女性にしかできない古典落語を追究しています。舞台はあくまで江戸や明治、登場するのは昔の人たち。古典風改作・新作です。22世紀に一つでも多く残るような女性の落語を作りたいんです。
 2児の母親として真打ちになった落語家は、私が初めてです。毎日子育てをしながら高座に上がり続けていますが、1日の時間のやりくりはパズルのよう。子育てとの両立で日本一忙しい噺家でしょう(笑)。絶対数が少ない女性は、寄席でトリをつとめたり、いつでも寄席に出ていたりする前例も少ないので、これからも史上初をどんどん作っていきたいです。それは、とてもやりがいのあること。これからもいろいろな努力を重ねていきますが、苦労をまったく感じさせずにふわりと高座をつとめて、「今日も楽しかった」とお客さまに喜んでいただきたいですね。

〈 影響を受けた芸人 〉
三遊亭白鳥

師匠の燕路以外で言えば、三遊亭白鳥師匠です。新作をたくさん作っている方で、「落語は男がやるもんなんだから、女がやる落語を作んなきゃダメだ」と教えてくださいました。白鳥師匠がいらっしゃらなければ、今のような芸風になるのにもっと時間がかかったと思います。

りゅうてい・こみち/1974年東京都生まれ。99年第二文学部卒業。出版社勤務を経て、2003年7代目柳亭燕路へ入門して落語家に。落語協会所属。17年に真打ち昇進。寄席への出演のほか、各地での落語会、独演会、テレビ・ラジオ出演など精力的に活動。長唄や日本舞踊も得意な「歌って踊れる噺家」。2児の母で、夫は漫才師「宮田陽・昇」の宮田昇。

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