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キャンパスはミュージアム
早稲田大学は「Waseda Vision 150」の「早稲田らしさと誇りの醸成」という核心戦略の下、「キャンパスそのものをミュージアム化する」という独創的な取り組みを進めている。坪内博士記念演劇博物館、會津八一記念博物館、早稲田大学歴史館にとどまらず、キャンパスには銅像、石像、絵画、歴史的建造物など、多くの芸術・美術作品、文化資料が点在している。この記事では戸山キャンパスを紹介する。
イラスト=青山邦彦(1989年理工、91年工研修)
1. 31号館
本学創立80周年記念事業の一環として1962(昭和37)年に完成した戸山キャンパス。多くの名建築を残した村野藤吾(1891~1984/1918年専早大理工、本学名誉博士)により設計された文学部校舎の中で、唯一現存するのが31号館となる。外部壁面から廊下の上部を通り、廊下と教室に自然光を入れるスリット構造など、村野藤吾による特別な工夫がなされている。
2.旧33号館のガラス窓 33号館1階
村野藤吾設計の旧33号館は高層棟・低層棟の2棟から成り、高層棟はその外観から「国連ビル」と通称され、戸山キャンパスを象徴する建物であった。光に対して鋭敏な感性を持った村野は、高層棟1階のエレベーターホール西側に各務クリスタル製作所が作った窓を据え、模様状の半透明ガラスによって濾過された澄明で柔らかな光を招き入れた。
3.辻晉堂のレリーフ 33号館1階
戸山キャンパスには、彫刻家辻晉堂(1910~1981)のレリーフ作品5点が設置されている。旧33号館高層棟ピロティ部(1階の柱のみの外構空間)の壁面を飾っていたのが、この白いタイルレリーフ。縦2.350メートル、横5.660メートルの大きな作品であったことから、そのままの状態で切り取ることが難しく、二つに切断して新棟に再設置された。
4.辻晉堂のレリーフ
旧33号館高層棟1階北面を飾っていたタイルレリーフ。ほぼ旧状のまま切り取られ、新高層棟の北側に再設置された。
5.辻晉堂のレリーフ
新33号館高層棟西側外部に置かれている茶色のレリーフは、旧棟竣工時には181大教室の南側の小庭にあった。181大教室は1991(平成3)年に取り壊しとなり、1992(平成4)年10月に第2研究棟が竣工。その際に、このレリーフも旧33号館低層棟西側外部へ移され、トイレの目隠しのような存在になっていたが、新棟建設に伴い現在の場所に再々設置された。
6.辻晉堂のレリーフ
新33号館低層棟の1階外側のレリーフは、かつての位置にあったものを一度切り取り、ほぼ同じ場所に再設置したもの。辻晉堂は「陶彫」によって知られている彫刻家だが、このレリーフにも「陶」が使用されている。
7.辻晉堂の彫刻
戸山キャンパスのスロープ側面は石垣状になっているが、そこにも辻晉堂の彫刻が認められる。
8.長谷川路可の床モザイク 33号館1階
旧33号館高層棟1階のエレベーターホールに設置されていた長谷川路可(1897~1967)のデザインによる床モザイクを再設置したもの。長谷川路可は武蔵野美術学校(武蔵野美術大学の前身)で教え、学生たちとフレスコ(Fresco)やモザイク(Mosaic)を研究する「FM」グループを結成しており、このグループによりこの床モザイクは作成された。
9.長谷川路可のフレスコ画『アフロディーテ』 33号館1階
長谷川路可が1931(昭和6)年に制作したフレスコ画。漆喰の上に水性顔料で描くフレスコ画の実践のために、早稲田の建築科の学生に実際に描いて見せたもの。現在の早稲田キャンパスにあった13号館(建築科)の一室の壁面に描かれ保存されていたが、13号館の解体に伴い壁ごと切断され、會津八一記念博物館で展示されていた。その後、2013(平成25)年春に新33号館1階に再設置された。
10.早稲田スポーツミュージアム 2019年3月開館予定
「早稲田スポーツ」の歴史と栄光をたどる新たなミュージアムが、2019年3月に早稲田アリーナ内に開館する。本学の過去・現在・未来にわたるスポーツに関する資料や情報などを常設・特別展示で公開するもので、早稲田スポーツの象徴的なシーンや先進的な出来事の紹介を通して早稲田らしさと誇りを伝え、体育各部の輝かしい実績や最新の動向にも触れることができる。
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