WASEDA’S Health Studyで分かる私たちの健康 | 早稲田大学 校友会
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WASEDA’S Health Studyで分かる私たちの健康 対談 荻原次晴×岡浩一朗

早稲田大学の健康づくり研究「WASEDA’S Health Study」。校友を対象に長期間の健康調査を行い、そのデータを分析することで、健康な社会づくりに役立てるプロジェクトです。今回、校友の荻原次晴さんに、測定調査のB~Dコースに共通する活動量計調査を一日体験していただき、研究代表者である岡浩一朗教授と共に、プロジェクトについて語っていただきました。

早稲田大学の一大プロジェクト WASEDA'S Health Studyとは?

 WASEDA'S Health Studyは早稲田大学の校友を対象にした健康づくりプロジェクトです。40歳以上を対象に、一人一人の生活習慣と健康状態を20年にわたって追跡調査。そのデータとがんや糖尿病などの病気の関係を明らかにしていくことで、社会の健康増進に貢献することを目的としています。2014年にスタートし、数千人規模のデータ集約を目指すべく、現在参加者を集めながら進めています。

荻原 私もこのプロジェクトには以前から関心がありました。長年スポーツと共に生きてきましたが、40歳を過ぎて体力の衰えを感じることが増えた気がします。

 生活習慣の影響は、遅れて表れ始めるものです。40歳を過ぎて、血圧や体脂肪数値に変化が表れた方は多いのではないでしょうか。20〜30歳代の生活習慣が身体に影響を及ぼし始めているのです。60歳以後のがん、糖尿病、寝たきり、認知症の原因を調べるには、それまでの生活習慣を分析する必要があります。そのため、当プロジェクトでは20年間の追跡調査を試みます。

荻原 早稲田大学の校友を調査対象にしていますが、このような調査はWASEDA'S Health Study特有なのでしょうか?

 研究を目的とした一般の方への健康調査は、自治体などの地域単位で行うケースが多いのです。海外ではハーバード大学で同様の研究が進んでいますが、調査対象は男性のみ。女性を含めた幅広いデータを収集できるのはWASEDA'S Health Studyの強みだと思います。また、所沢キャンパスではMRIをはじめとする最新設備を完備しており、腹部肥満度、筋肉量、最大酸素摂取量など幅広い身体検査が可能です。プロジェクトには遺伝子の研究を専門とする教授なども参加し、それぞれのデータを各領域から分析しています。

荻原 早稲田大学ならではの多くの参加者と研究者が協力して可能になるプロジェクト。ぜひ未来に役立つ研究成果を発信していきたいですね。

生活サイクルの健康度が分かる活動量調査

 WASEDA'S Health Studyでは4つのコースを用意しています。インターネットのアンケートで気軽に参加できるAコース、Aコースに活動量計調査を加えたBコース、Bコースに全国の拠点での健康診断を加えたCコース、Bコースに所沢キャンパスでの健康・体力測定を加えたDコースです。今回荻原さんに体験していただいたのはB~Dコースに共通する活動量計の調査です。実際の調査では1週間装着するものですが、これを1日だけ装着していただきました。

荻原 歩数計のような小型の機器を腰に着けるだけで、歩いたり座ったりした時間を正確に測定できるのでしょうか?

 この活動量計は、3軸加速度で人間の動きを正確に捉え、1分ごとに活動強度という数値で記録していきます。活動強度が1.5よりも低いのが座っている状態。1.5~3は物を取りに行くなど、ちょっとした活動に当たる「低強度身体活動」。3を超えると「中高強度身体活動」です。一般的な日本のデスクワーカーは、生活(測定時間)の60~70パーセントを座って過ごしています。場合によっては80パーセント以上座り、中高強度身体活動はわずか2パーセントと、ほとんど動かない方もいます。これはかなり不健康と言えます。荻原さんの1日を見ると、中高強度身体活動の回数が非常に多い。座っている時間は8.8時間で58パーセント。日本人の平均よりやや少ない数値です。低強度身体活動は11パーセント。細かな動きがかなり多いですね。

荻原 じっとしているのが苦手なのです(笑)。職業柄、あらゆる場所に移動するため、このような結果につながったのでしょう。休日も家事やスポーツをするので、活動量の多い生活をしていると思います。

 総じて荻原さんの生活スタイルは理想的と言えます。ポイントは、中高強度身体活動の回数です。最近多く見られるのが、毎日30分ジョギングをして他の時間は全てデスクワークという方。こうした方々は「アクティブ・カウチポテト」と呼ばれ、実は健康への効果が低いという結果が出てきているのです。最も理想的なのは中高強度身体活動を1時間程度行うこと。荻原さんのグラフには、1時間以上座りっぱなしの時間が一度(22~23時ごろ)しかありません。

荻原 この時間は、自宅でDVDを見ていました。夢中になっていたのでしょう(笑)。

 映画のクライマックスでも、一時停止して少し体を動かすのが理想です。

荻原 こうして自分の生活を客観的に分析されると面白いものですね。

座っている時間はトップクラス!? 運動不足に悩む日本の現代社会

 一般的な日本のオフィスワーカーの1日を想像してみましょう。出社して座り、ランチで座り、午後も座ってデスクワーク。夕方には疲れ、残された気力を振り絞って居酒屋でまた座る……そうした方が多いのではないでしょうか。夕方の疲労感も、実は運動することで解消されるのですが、仕事に運動を取り入れるのは現実的には難しいのかもしれません。

荻原 座れば座るほど、疲れがたまってしまうのは悪循環ですね。1日の終わりは立ち飲み屋で飲むと良いのかもしれません(笑)。

 そのとおりです。近年では健康のためにスタンディングワークを推進する企業が増えています。私の研究室も導入しました。人間は座ると無意識に動かなくなるのですが、立っていれば自然に動きます。ずっと仁王立ちをしていることはありませんよね? 運動が苦手な方は、自分を必然的に立つ環境に置くのが効果的です。犬を散歩させたり、美術館で歩き回ったり、好きなことで体を動かすのが良いでしょう。

荻原 海外の小学校では、授業を立って受ける試みがあるようですね。日本では、公園にいるのに携帯ゲームなどで遊ぶ子どもをよく見掛けます。私にも子どもがいるので、つい買い与えてしまう保護者の気持ちは分かります。でも、子どものうちに運動する習慣を身に付けないと、その先ずっと運動不足になってしまう。体を動かす楽しみを教えるのも、親の役目ではないでしょうか。

 今の子どもたちは私たちの世代と比べ、運動量が半減したといわれます。しかし、便利な道具が身の回りに増えている環境は大人も同じです。リモコン1つでほとんどの家電が動きますし、近年ではロボットが掃除までしてくれます。どうしても社会は「動かない方が良い」という方向に進んでしまうのです。畳文化を持つ日本人は、かつて立ち上がるのが得意な国民でした。しかし今日では、世界で最も座っている時間が長いというデータもあるほどです。

荻原 日本人全体の体力が低下すると、いつまでも長寿大国でいられなくなってしまいますね。

 そうした問題に対しても、WASEDA'S Health Studyの研究成果で貢献したいのです。20年間にわたる長期プロジェクトですが、いずれ価値の高い結果が出るでしょう。

荻原 プロジェクトが進んで多くの校友が参加することで、膨大なデータが集まるのが楽しみです。

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おか・こういちろう

1970年岡山県生まれ。99年人間科学研究科博士後期課程を修了、博士(人間科学)を取得。同学部助手、日本学術振興会特別研究員(PD)、東京都老人総合研究所介護予防緊急対策室主任、スポーツ科学学術院准教授を経て、現同学術院教授。

 

おぎわら・つぎはる

1969年群馬県生まれ。93年人間科学部卒業。94年よりノルディック複合・ワールドカップ出場。95年ノルディックスキー世界選手権団体戦金メダリスト、98年長野オリンピック日本代表。引退後はスポーツキャスターとして活躍する。

活動量計調査

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万歩計サイズの活動量計を腰につけ、一日をスタート!

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仕事や家事、趣味それぞれで、どれだけ動いているかが自動で記録されます

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活動記録用紙を記入。WASEDA'S Health Study事務局に送付します

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