早稲田大学校友会設立125周年記念企画
報道の使命と社会的責務を考えるシンポジウム
〜長井健司記者が遺したもの〜
開催レポート

2009年9月30日、大隈講堂にて、「早稲田大学校友会設立125周年記念企画 報道の使命と社会的責務を考えるシンポジウム〜長井健司記者が遺したもの」(主催:早稲田大学・早稲田大学校友会)が開催された。

同シンポジウムは、2007年9月27日にミャンマーで亡くなったジャーナリスト・長井健司さんの三回忌に際し、報道の使命と社会的責務について、社会に問い直す機会とすべく企画されたもの。

司会には、テレビキャスターの麻木久仁子氏、パネリストとして、鳥越俊太郎氏(ジャーナリスト)、田丸美寿々氏(TBS報道特集NEXTキャスター、早稲田大学非常勤講師)、原憲一氏(RSK山陽放送常務取締役、元報道特集キャスター)、瀬川至朗氏(早稲田大学政治経済学術院教授、政治学研究科ジャーナリズムコースプログラム・マネージャー)、赤阪徳浩氏(TBS報道局プロデューサー)と、報道メディアの第一線で活躍する豪華な顔ぶれが揃った。

冒頭、長井さんが所属していたAPF通信社の代表である山路徹氏が海外ニュースや紛争の現状に対し、1人でも多くの方に関心を持っていただきたいと挨拶した後、校友会事業委員会副委員長で今回のイベントを企画したプロデューサー・近藤由紀子氏が長井さんの事件に際してのエピソードや命の尊さと平和への想いを語った。続いて主催者代表として早稲田大学より堀口健治副総長が、立法・行政・司法の三権分立とは離れた立場で、そのあり方や行く末を批判・喧伝する第4の権力としてのジャーナリズムの役割について、この機会に改めて確認してもらいたい、と挨拶した。

麻木氏の巧みな進行に従って、危険地取材と報道の安全基準、組織的な報道とフリーランスの相違点、欧米と日本のジャーナリストの違いなどの海外報道の現状と課題、また、国内ジャーナリズムの問題については横並び報道、テレビと視聴率、制作側と視聴者側それぞれの抱える問題点、インターネットとマスメディア、などの観点で、現場の第一線で活躍するジャーナリストがジャーナリズムの現状について率直かつ示唆に富んだ意見を交換。

また、途中、ミャンマーで生じている現実を伝える映像を収録するために凄絶な努力を続けるビデオジャーナリストたちを記録した映画「ビルマVJ」から、長井健司さんが射殺されたシーンなどを編集した短い映像を上映。映画「ビルマVJ」原案脚本者であるヤン・クロスガード氏がゲスト登場し、作品に込めた想いやビルマにおけるビデオジャーナリストたちの志について語った。

冒頭と最後には、韓国人歌手のKenny氏が、長井さんの映像を前に、3年前の事件がきっかけで誕生した曲「涙〜世界のどこかで瞬間」を披露し、その余韻も冷めやらぬまま、長時間にわたるシンポジウムは閉幕。さまざまな制約のなかにも真実を伝えるために奔走するジャーナリストたちの志が、小雨のなか集まった熱心な聴衆の胸に力強く響く、実り多いシンポジウムとなった。

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